CleanMyMac X は「評判の良い」Macクリーナーとして、ユーザーから絶大な人気があります。
CleanMyMac X(クリーンマイマック)は、手動では判別が難しいシステム内部の不要データも一掃し、ウイルスチェックや高速化を実現するMacのクリーナーソフトです。
その CleanMyMac Xを開発しているのがウクライナのキエフに本社を置くMacPaw Inc.です。
日本から約8,000km離れたウクライナで、どのような組織がどのようなビジョンやパーパスを掲げて事業を行っているのでしょうか?
今回は「CleanMyMac X」の開発に関わっているデザインリーダー、エンジニアリングマネージャー、スタッフソフトウェアエンジニアの皆様に、MacPawという会社の舞台裏についてお話を伺いました。
CleanMyMac Xを検討中の方も、既にお使いのユーザーさんにも、読んで頂ければ幸いです(2023年05月)
CleanMyMac X のはじまり。
Macクリーナーで有名なCleanMyMac X は、誰がどのような思いでスタートしたのでしょうか?
MacPawは、ウクライナのキエフで、Apple製品への情熱に駆られた21歳の学生、Oleksandr Kosovanさん(オレクサンドル・コソヴァン)によって、寮の一室から始まりました。
最初にオレクサンドルさんが手に入れることができたApple製品は、Apple Wireless Keyboardでした。彼は自分の1ヶ月分の収入をすべて費やしてこのキーボードを購入。このキーボードこそが、彼がAppleと同じような品質とデザインの製品を作りたいという情熱をかき立てるきっかけとなったのです。
最初は学生寮の一室から始まったなんて夢のある話ですね。
十分なお金を貯めた時、オレクサンドルさんは大学のグループで唯一PCを使っていない学生でした。大学の課題をクリアするために、オレクサンドルさんはWindowsアプリケーションを再プログラムしながら、OS Xの詳細を学んでいきました。
この知識は、CleanMyMacというシステムクリーニングユーティリティを開発することに結実し、MacPawの誕生につながりました。
現在のMacPaw Inc.
学生寮から始まり、現在ではどんな会社になったのか教えてください。
現在、MacPawはウクライナのキエフに本社を置くソフトウェア開発会社であり、macOSとiOS向けのソフトウェアを開発・配布しています。
MacPawはCleanMyMac X、Setapp、ClearVPNなど、複数の製品を手がけており、2017年にはThe Unarchiverを買収しています。
日本とウクライナは約8,000kmも離れていますが、日本にもCleanMyMacのファンがたくさんいます。そのような素晴らしいプロダクトの開発元「MacPaw Inc」には、どのような人が働いているのですか?
会社には約500人のエンジニアが働いています。
そのうち53%が男性、47%が女性で、平均年齢は31歳です。
へぇー!私の想像を超える多さでした。
しかも日本のソフトウェア企業は男性の比率が多いのですが、MacPaw Inc.は男女のバランスがとても良いですね。
MacPaw Inc の パーパス・ミッション・ビジョン
会社規模が大きくなるにつれ、従業員が増えてきますよね。
彼らにとって、MacPaw Inc.の魅力はどういうところにあるのでしょうか?会社が掲げるパーパスやミッション、ビジョンについて聞いても良いでしょうか?
我々が掲げる [パーパス] [ミッション] [ビジョン]は以下の通りです。
テクノロジーと人々を友達にすること
理想的な世界では、機械と人間がお互いを理解できるようになります。まるで友達のような関係です。
あなたを助けるソフトウェアをサポートすること
私たちの主な仕事は、もともと人間を助けるために作られたツールを作ることです。機械が最善の状態で動くように手助けすることで、私たちは間接的に人間が最大限の可能性を引き出せるようにサポートしています。機械は人間をサポートするために作られました。私たちのアプリは、機械が人間を助けるのを支援するために作られました。
テクノロジーが人々の生活を力強くサポートする世界
私たちはソフトウェアの会社であり、生活の質を向上させ、生産性を高めることを目指しています。私たちはテクノロジーが明るい未来を作る最良の手段だと信じています。ただし、私たちはテクノロジーを人々の利益のために使うことが重要だと考えています。テクノロジーはコミュニティを改善し、家族を結びつけ、個人が変化を起こす力を与えることができます。私たちは人間が主役であり、テクノロジーが私たちの目標達成をサポートするためのツールであると考えています。
会社のパーパス、ミッション、ビジョンが明確になっているからこそ、従業員みんなと同じ方向を向いて成長をし続けることができるのですね。
素晴らしい!
CleanMyMac X とは?
今度はそんなMacPaw Inc.の主力製品である CleanMyMac X について教えていただけますか?
CleanMyMacは、Macをクリーンアップすることで新品同様なぐらいパワーアップし、ウイルスなどから大切なMacを守る高度なクリーナーアプリです。 これまでに2,500万回以上ダウンロードされ、多くのMacを最適な状態に保ってきました。
また、アプリの審査が厳しいことで知られる「Mac App Store」で販売されており、Macをクリーニングするだけでなく、マルウェアや広告ウェアなどから守ります。
その他にも便利機能が搭載されており、Macを安全かつ快適に使い続けるために欠かすことのできない包括的なツールとして多くのユーザーにお使い頂いています。
また、CleanMyMac X について数字で表現したものをご用意しました。
「データでわかるCleanMyMac X」という感じですね。
- CleanMyMacは、2,500万回以上ダウンロードされました。
- CleanMyMacは、Macの必須メンテナンスのための49のツールを提供。
- CleanMyMacは、毎日185カ国で100万台のMacをクリーンアップしています。
- CleanMyMacは、12の言語に対応しています。
- CleanMyMacのユーザーは、年間平均で66ギガバイトの不要なファイルを削除しています。
- CleanMyMacのユーザーは、平均して135 GBのスペースを解放します。
数字からCleanMyMac XがたくさんのMacユーザーに受け入れられていることが分かりますね。
優れたデザイン品質を保つヒント
CleanMyMac X が愛される理由の1つに優れたデザイン性が挙げられると思います。MacPaw Inc. にとってデザインの位置付けを教えてください。
この問いには CleanMyMac XのデザインリーダーであるOleksandr Kravchuk 氏が答えます。
MacPaw Inc.では、デザインを非常に重要視しています。
良いデザインはユーザーの体験をさらに上質なものにしてくれるからです。
また、私たちはデザインに関心の強いMacユーザー向けのソフトウェアを開発していますので、私たちもApple製品に負けない優れたデザインを提供し続けることを心がけています。
なるほどですね。
やはり、デザインにはかなりこだわって作られているのすね。
はい。その通りです。
例えば、美しい日の出のグラデーションをアプリに取り入れたり、自然から多くのインスピレーションを受け、アプリに反映しています。
また、音についてはプロのミュージシャンと協力し、Macをクリーニングする際にまるで瞑想中にいるような感覚を作り出しています。
自然のものからインスピレーションを受けているとは知りませんでした。
洗練されたデザインでありながらも、どこか安定感があるのは、それが理由かもしれませんね。
あの猫のキャラクター
CleanMyMac X の起動画面に、猫のキャラクターが出るときがあります。あれは何ですか? 会社のキャラクターなのでしょうか?
10年以上前、MacPawのCTOであるVira Tkachenkoさんは、地下室で小さな捨て猫を見つけました。
翌日、ヴィーラさんはその子猫を会社のオフィスに連れて行き、チームに紹介したのがはじまりです。
チームはその子猫に愛情を注ぎ、彼の名前をフィクセル(Fixel)と呼び、オフィスの常連メンバーとすることを決めたのです。
数年後の2014年には、もう一匹の子猫であるフーバー(Hoover)もMacPawのオフィスに加わり、フィクセルとフーバーはMacPawチームと文化の欠かせない存在となっています。
彼らはただのキャラクターではなく、MacPawの家族の一員であり、私たちはこれらの二匹なしでオフィスを想像することができません。
最近、MacPawはフィクセルとフーバーにちなんだブランドフォントをリリースしました。このフォントは猫の兄弟の個性を完璧に表現しています。
なんと!かわいい子猫たちはオフィスに実在する、MacPaw Inc.のメンバーだったんですね。それにしてもブランドフォントのリリースに至るとは驚きです!これは良い話を聞けました。
ウイルス対策機能について
CleanMyMac X には、Macの不要なゴミデータをお掃除するだけでなく、「ウイルス対策機能」もありますよね。最新のウイルスに随時対応するのは大変ではありませんか?
この問いには CleanMyMac Xのエンジニアリングマネージャー が答えます。
率直に言うと、難しくありません。
結局のところ、悪意のあるコードの世界では(特にmacOS上において)、新しいウイルスを考案するのは至難の業です。現在、悪意のあるウイルスなどを作り出すために使用している技術は数えるほどしかありません。
違いは、それをプログラムする方法なのです。
最も難しいところは、ウイルスを「分解する」ことです(まるでDNAの鎖を解読するようにして、必要なデータブロックに辿り着くこと)ですから最新のウイルスであっても、全ては以下2つの要素に依存しています。
ソフトウェアの脆弱性:
これを攻撃者が使ってコンピュータに侵入することができます。
彼らの意図を隠すために使う技術:
彼らの意図を隠すために犯罪者が使う手法
したがって、以下のように答える方がより正しいです。
「私たちのユーザーのコンピュータで日常的に使用されている正当なソフトウェアで見つかった新しい脆弱性を追跡することよりも難しくありません」
開発の舞台裏
開発で最も苦労しているところは何ですか?
この問いには CleanMyMac XのスタッフソフトウェアエンジニアのPavlo Taikalo 氏 が答えます。
開発プロセスで最も難しいところは、CleanMyMac Xをアップデートする際に、その影響範囲を考慮することです。新しいシステムのアップデートは、どんな些細な変更でも既存のシステムに影響を及ぼします。
私たちはできるだけ早くその変化を見つけ出す必要があるのです。
CleanMyMac X のメジャーバージョンアップ
CleanMyMac X の次期メジャーバージョンアップはいつ頃の予定ですか?
私たちはユーザーのフィードバックを大切にしています。いつも注目し、実際に取り入れるように心がけています。実際にCleanMyMacの中には、良い提案をしてくれたユーザーの名前を使った機能もあります。
次回のメジャーバージョンアップの日程を明確にお伝えすることはできませんが、私たちはソフトウェアをより効率的に使用できることに情熱を注ぎ、定期的に小さなバージョンアップを繰り返して品質を上げています。
AI(人工知能)× CleanMyMac X
最近ではChatGPTに注目が集まっていますが、CleanMyMac X に AI(人工知能)を導入する予定はありますか?
過去には機械学習の実験を行いましたが、大規模にCleanMyMac Xに取り入れるには成功とは言えませんでした。
私たちはCleanMyMacに付加価値をもたらすAI/MLの研究を引き続き進めています。
将来的には、そうした機能が実装される可能性もありますので、楽しみにお待ちください。
インタビューを終えて
本記事では、Macクリーナー CleanMyMac X の開発者インタビューをご紹介しました。
CleanMyMac X を検討中の人も、すでに使っているユーザーの方も、楽しんでいただけましたでしょうか? 公式サイトでは知り得ない秘話もあり、CleanMyMac X の1ファンとして私も興味深いインタビューとなりました。
この記事でCleanMyMac Xに興味が湧いた方は、CleanMyMac Xの評判や類似製品との比較記事がありますので、ご覧いただければ幸いです。